遺産分割を行う際の注意点
1 遺産分割を行う際に注意すべき点の概要
遺産分割の際に行わなければならないことはとても多く、それに伴い注意しなければならない点もたくさん存在します。
代表的なものとして、相続人調査・確定、相続財産(相続債務)の調査、制限行為能力者への対応、期限が存在するものへの対応、遺産分割協議書の作成方法、遺産分割協議がまとまらない場合の対応への注意点が挙げられます。
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2 相続人調査・確定
遺産分割協議は、相続人全員で行う必要があります。
そのため、遺産分割を行う前に、相続人を調査し、確定させなければなりません。
具体的には、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本と、現在の相続人の戸籍謄本を収集する必要があります。
代襲相続が発生している場合には、被代襲相続人の死亡の記載のある戸籍謄本も必要です。
3 相続財産(相続債務)の調査
遺産分割は、どの相続人が、どの相続財産を取得するかを決める手続きですので、相続財産の調査も必須になります。
相続税申告を行う必要がある場合には、申告漏れを防ぐためにも、相続財産の調査を綿密に行う必要があります。
また、相続債務が多額である場合には、相続放棄をすることも視野に入りますので、熟慮期間(相続の開始を知った日から3か月)以内に相続債務の金額を調査することも大切です。
4 制限行為能力者への対応
相続人の中に重度の認知症の方や未成年者の方など、制限行為能力者に該当する方がいらっしゃる場合には、そのままでは遺産分割を成立させることができませんので、後見人の選任が必要になります。
また、未成年者の方と、その親権者(法定代理人)の方が両方とも相続人となっている場合には、利益相反が生じてしまう関係上、未成年者の方に特別代理人をつける必要があります。
5 期限が存在するものへの対応
遺産分割自体には期限はありませんが、遺産分割に関連する手続き等の中には、期限が設けられているものもあります。
例えば、相続税の申告は相続の開始を知った日の翌日から10か月以内に行うこととされています。
そして、相続税の申告をするためには、原則として、遺産分割を終えている必要があります。
また、2024年4月1日以降は、相続登記が義務化されます。
相続登記は、相続の開始及び所有権を取得したことを知った日から3年以内に行わないと過料が課せられることになります。
そのため、原則として相続の開始から3年以内に遺産分割を終えて相続登記をする必要があります。
6 遺産分割協議書の作成方法
遺産分割協議書の形式は、法律で決められているわけではありません。
もっとも、相続人全員が遺産分割の内容に合意したことを示すため、相続人全員が署名と押印をします。
押印には実印を用い、印鑑証明書も添付します。
また、金融機関や法務局における相続手続きを円滑に行うためには、預貯金の口座情報や不動産の登記情報など、相続財産に関する情報は正確に記載する必要があります。