遺産分割に期限はあるのか
1 遺産分割協議自体に期限はありません
結論としては、遺産分割協議そのものには、期限はありません。
実際に、紛争が長期化しているなどの理由により、何年も遺産分割が行われていないケースもあります。
ただし、一定の期限内に遺産分割協議をしないと行使できなくなってしまう権利や、罰則が適用される可能性がある手続きもありますので、その点には注意が必要です。
以下、詳しく説明します。
2 特別受益、寄与分の主張は相続開始から10年以内
2023年4月1日に改正民法が施行され、相続開始から10年を経過すると、特別受益および寄与分の主張ができなくなりました。
特別受益とは、被相続人の生前贈与や遺贈、死因贈与で受け取った利益のことをいい、寄与分は相続財産の維持、増加への貢献度に応じて認められる相続分の増額分をいいます。
これらは、遺産分割の際に論点となることが多いので、早めに主張する必要があります。
なお、この改正民法は、2023年4月1日以前に発生した相続にも適用されます。
経過措置として、施行日から5年以内に期限が来る場合は、施行日から5年以内であれば特別受益や寄与分を主張できるとされています。
3 相続登記は一定期間内に行わなければならない
2024年4月1日以降、相続登記が義務化されます。
義務の内容は、具体的には、次の通りです。
①相続によって不動産の所有権を取得したことを知ったときから3年以内に不動産の名義変更登記をすること
②遺産分割協議が成立したときは、成立した日から3年以内に名義変更登記をすること
2024年4月1日以前に発生した相続においては、原則として2024年4月1日から3年以内に相続登記を行うこととされています。
紛争に発展するなどにより、遺産分割協議が長引き、速やかに相続登記ができない場合、一旦法定相続割合で相続登記をするか、または相続人であることを申告することで相続登記義務が免除される制度を用いることができます。
これらの義務に違反した場合、10万円以下の過料の対象となります。
また、相続登記がされないまま次の相続が発生するなどすると、不動産の権利関係が非常に複雑になってしまいますので、実務の観点からも、しっかり相続登記を行いましょう。
4 相続税の申告・納税は相続の開始を知った日から10か月以内
相続税の申告、納税は、相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から10か月以内に行わなければなりません。
相続税申告は、相続財産の評価額の合計が基礎控除額や非課税枠の合計金額を上回る場合に必要になります。
しかし、申告期限までに、必ずしも遺産分割協議を終えなければならないというわけではありません。
相続税の申告期限までに遺産分割協議を終えることができない場合には、一旦法定相続割合で相続をしたと仮定して、相続税申告(未分割申告)および納税を行う必要があります。
もっとも、未分割申告の場合、相続税額を軽減できる特例が使えないことがあるため、支払う相続税額が高くなる傾向にありますので、可能な限り相続税申告・納税期限までに遺産分割協議を行いましょう。
遺産分割を行う際の注意点 不動産しかない場合の遺産分割の方法